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そういかない面もあるのです。献体登録者以外のご遺体も保管庫にお預かりしているのです。

 

星野 私の辞めた大学なんかの場合にも、数年前からそういう傾向が出ている。献体というのをお墓も作らなくていいし、葬式もしなくていいからという、すりかえの論理、論法でやられる。白菊会、篤志献体の団体を作ったころの精神いずこにありやという感じですよ。ですから前畑先生に感謝状も出していただいたし、法律も作っていただいて、若い解剖の教授は、その苦労を分かってるんだろうかなんていうことを、年寄りじみたことを言いたくなってくるわけ。(笑)

 

内野 献体の精神というのは元々無条件無報酬の精神ですね。お墓に入れてくれというのは条件が出ているということですからまずいわけですね。ですけど、今前畑先生の言われたのはそういった身寄りのないご遺体とかいうようなものとの関係をおっしゃってるわけなんで、その点では私は百パーセント献体であるべきだろうというふうに思うんですが、文部省としてもやはりそういうお考えですか。

 

前畑 いや、今の文部省がどう考えてるかは確認はしておりませんけども、この前もらった資料によりますと、昭和55年度収集体数は2,820、うち篤志解家1,102で、献体率34%です。ところが平成6年では収集体数が4,656、うち篤志家3,459、献体率74%、これは竹内先生のお作りになった法律の成果もあるんでしょうけども、献体比率を100まで持っていこうというふうなお考えで先生方はおいでなのかということをおうかがいしたわけですよ。

 

内野 そうですね。佐藤先生いかがですか。

 

佐藤(達) そうですね。

 

江藤 それはその通りなんだけど現実にはなかなかそういかないというところに問題のポイントがあるんでしよう?

 

内野 しかしそれは我々の大学の側の姿勢で、僕は百パーセントになると思うんですよ。今迄お話し下さったように創成期には特にご苦労があったと思うんですが、お陰さまでこういうふうになってきました。ただ、まだ歯学部のほうにややご苦労が残ってるんじゃないかと思うんですが、現状はどうですか歯学部のほうは。

 

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佐藤(亨) 最近はだいぶんよくなりましたけども、最初は最悪な状態だったんです。で、役所に行きますと医学教育のために献体をお願いしますというパンフレットがあるんですね。医学教育だから歯学には関係ないでしょうと言われまして、話に乗ってくれなかったんです。感謝状の文面で3ヵ所も医学・歯学ってあるけども、これを医学一つにしたほうがいいんじゃないかと佐藤達夫先生がおっしゃるんですよ。(笑)私は歯学で随分苦労してきてるんだからこれは入れてもらわなきゃいけないと。でもこれはくどいんじゃないというんで苦労したんですよ。
内野 分かりますね。感謝状作るのにくどいのは困りますからね。(笑)
佐藤(亨) 「歯学」ということばを、くどくてもいいからといってお願いしてやっと入れることになったんですが、これは佐藤達夫先生のお陰なんですよ。

 

内野 なるほど。

 

佐藤(亨) 昭和61年に解剖学会の解剖体委員会、ちょうど内野先生が委員長のとき、オブザーバーで出席したわけです。医学部と歯学部を合わせると、109大学ありますね。歯学部が29大学ありますから委員の3分の1は歯学部出身の先生がいなきゃならないのに全部医学部の出身です。一事が萬事で歯学部は医学部の陰にあって献体でも苦労しています。10年掛かって献体登録が大体300人です。献体運動を一生懸命やりました。せっかく入っても、いつか医学部でお世話になるでしょうからとそちらのほうに転属するんですよね。

 

○将来への変換期

 

内野 歯学部が苦労されてることはよく分かります。今私どもの大学では、琉球大学の医学部が非常に足りないということで姉妹関係を結びまして、東京医大の東寿会で協力会員を募りました。多くの方の協力を得て成功しております。ですから解剖学会としても全連としてもできるだけそういうような協力関係を結んで、足りないところには融通できるよ

 

 

 

 

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